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脳梗塞発病後の治療

急性期治療が後に大きく影響

検査の結果、脳梗塞だと診断がついたら、すぐに治療を始めます。

発症直後からl~2週間の回に行われる治療を急性期治療といいます。

脳梗塞では、この急性期治療が非常に重要だと考えられています。

脳梗塞が起こり、脳の血流が途絶えると脳組織は壊死に陥ります。

血流が途絶えている時間が長いほど、壊死が広がっていきます。

そうなると後遺症が強く残ることになります。

それによって、病後のQOL(生活の質)やΛDL(日常の生活動作)が低下してしまいます。

QOLやADLの低下を最小限にとどめられるどうかは、急性期治療にかかっているといっても過言ではありません。

脳梗塞のタイプによって治療法が選択される

脳梗塞の急性期には薬物治療が行われます。

薬物治療には、抗血小板療法や抗凝固療法、血栓溶解療法などの抗血栓療法を中心に、抗浮腫療法、脳保護療法などの方法があります。

これらの治療法のなかから、脳梗塞のタイプによって選択します。

アテローム血栓性脳梗塞

発症後3時間以内であれば、血栓溶解療法を行える可能性があります。

血栓溶解療法には組織プラスミノーゲンーアクチベータ(t‐PA)という薬を静脈注射します。

t‐PAには何種類かの薬がありますが、脳梗塞の治療薬として用いることができるのは、アルテプラーゼという薬のみです。

発症から3時間を過ぎてしまった場合は、48時間以内ならば抗凝固療法の適用があるので、オザグレルやアルガトロバンを点滴投与します。

アスピリンも用いられます。

そのほか、症状に応じて抗浮腫療法、脳保護療法などが行われます。

心原性脳塞栓症

発症後3時間以内であれば、血栓溶解療法の効果が高いと考えられています。

3時間以降ならば、48時間まではヘパリンという薬を点滴注射します。

そのほかに抗浮腫療法、脳保護療法なども行われます。

ラクナ梗塞

抗血小板療法の適用があり、オザグレルの点滴投ケやアスピリンの経口投与が行われます。

なお、治療法は症状の程度や、患者さんの既往歴や合併症などによって選択されるため、個人によって違いがあることを知っておきましょう。

脳梗塞の治療は抗血栓療法が基本

脳梗塞の治療で、最も基本的な治療が抗血栓療法です。

脳梗塞の多くは、血栓による脳動脈の詰まりが原囚だからです。

抗血栓療法には、抗血小板療法、抗凝固療法、血栓溶解療法の3つがあります。

抗血小板療法

血小板は血液成分の1つで、主に出血を止めたり、傷の修復に働きます。

動脈硬化が進行してくると、血管の壁内にアテローム(粥腫斑)が形成されます。

アテロームが人きくなったり、炎症によってもろくなると、アテロームの表面の被膜が破れます。

被膜が破れると血管の内皮の下に存在する組織と、血液が直接接触することになります。

血液が直接、内皮下組織に接触すると、血小板が粘着(接着すること)し、さらには凝集(血小板どうしが接着すること)して血栓をつくります。

抗血小板療法は、血小板の働きを抑えて血栓ができるのを防ぐ治療法です。

抗血小板療法としては、血小板凝集抑制薬のアスピリンやチクロピジン、クロピドグレル、シロスタゾールなどの内服薬を用います。

一般に、抗血小板薬は、脳梗塞の慢性期の治療や、前ぶれ発作のTIAがあった人に予防薬として使用するものですが、アスピリンは急性期に服用しても効果があることがわかっています。

ただ、多くの急性期治療には、日本ではオザグレルを静脈に点滴投与する方法がとられています。

アスピリンは血小板のシクロオキシゲナーゼという酵素の働きを阻害し、トロンボキサンA2をつくらせないようにして血小板の凝集を抑えますが、オザグレルはトロンボキサンんそのものの合成を阻害して、血小板凝集を防ぐ薬です。

トロンボキサンんは、血小板の凝集を促したり、血管を収縮させて血栓をつくったり、血管を詰まらせやすくするため、その合成を阻害するアスピリンやオザグレルが有効というわけです。

抗凝固療法

脳の動脈が詰まって、血流が停滞すると、それによってさらに血栓ができやすくなります。

こうしてできる血位をフィブリン血栓といいます。

抗凝囚療法は、このフィブリン血栓の形成を抑える治療法です。

血小板が凝集してできる血小板血栓が詰まって血流が停滞すると、フィブリンがっくられます。
これが赤血球や白血球を取り込んで、フィブリン血栓が成長します。

フィブリン血栓は、血小板血栓よりサイズが人きいので太い動脈に詰まりやすく、大きな脳梗塞を生じやすいといえます。

特に心原性脳塞栓症では、心臓の中にできるフィブリン血栓が原因となるため、抗凝固療法が第一選択となります。

抗凝固療法で用いられる薬には、ヘパリンとアルガトロバンがあり、どちらも静脈から点滴で投与します。

アルガトロバンはフィブリン血栓の合成に関係するトロンビンというたんぱくだけに作用するため、ヘパリンに比べて出血が起こりにくく、用いやすい薬です。

ただ、現時点では、発症後48時間以内のアテローム血栓性脳梗塞にしか適用がないため、ラクナ提塞や心原性脳塞栓症には使用することができません。

また、抗凝固薬も抗血小板薬と同じく、出血しやすくなるため、胃潰瘍などの出血性の病気があるときには慎重に用いる必要があります。

発症後3時間以内はt‐PAが有効

脳梗塞の治療では、」刻も早く血流を回復させることが症状の改善や後遺症の軽減には不可欠です。

そこで行われるのが、血栓溶解療法です。

脳の動脈を詰まらせた血栓を溶かして血流を回復させることができるため、治療がうまくいけば、非常に高い効果が得られます。

脳梗塞を起こした場合、梗章部の脳神経細胞は壊死に陥りますが、このとき、その周辺にはまだ壊死に陥っていないものの、血流不足によって、いねば半死半生の状態にある脳神経細胞があります。

この部分を虚血性ペナンブラといいます。

しかし、血流不足の時間が長く継続すると、やがて壊死に陥る危険があり、梗塞がますます広がることになります。

そこで、早急にこの虚血性ペナンブラを救う治療が必要です。

ペナンブラを助けるには、脳梗塞発症直後の「超急性期」と呼ばれる段階で有効な治療を行わなければなりません。

そのために有効な治療法として2005年に認旺されたのが、血栓溶解療法です。

薬で血栓を溶かすことによって、詰まっていた血管の血流を再開させてペナンブラを救い、梗塞が広がるのを防ぎます。

血栓溶解療法には、組織プラスミノーゲンーアクチペータ(t‐PA)の1つであるアルテプラーゼの静注療法を行います。

このt‐PAの治療効果は高く、これまでの治療法よりも、予後に後遺症が残らなかった人が確実に増えています。

ただし、血栓溶解療法は、脳梗塞の発症後3時間以内に始めなければ効果が得られません。
3時間以上経過してから行うと、梗塞部のもろくなった血管から脳出血(出血性脳枕塞)を起こして、かえって危険な状態になることがあるからです。

劇的な効果がある。方で、リスクもある治療法だといえます。

したがって、t‐PAによる治療は、ストロークーユニットのように脳梗塞の専門スタッフのいる医療機関で受けることが望ましいでしょう。

局所線溶療法

t‐PAを用いた血栓溶解療法では静脈注射で全身に薬を投与します。

そのため、出血の危険が生じるのですが、もっと局所的に薬を投ケできる治療法があります。

それが局所線溶療法です。

局所線溶療法では、ウロキナーゼという血栓溶解薬を用いますこ太もものつけ根の動脈から、血栓が詰まっている脳動脈までカテーテルを挿入し、血栓までさらに細いカテーテルを誘導します。

そして、脳血管遺影で血栓の位置を確認し、ウロキナーゼを注入して血栓を溶かすというものです。

部分的に薬を投与する方法なので、出血の危険が少なくなります。

この治療法が適しているのは、中大脳動脈に起こった脳塞栓症で、発症から3~6時間以内の場合だけです。

t‐PAと同じく、この治療法を熟知した専門医のもとで受けることが大事です。

ただし、この治療法は保険適用が承認されておらず、研究段階の実験的治療であることを認識しておいてください。

なお、3時間以内のときはt‐PA静注療法が優先されるので、この局所線溶療法を行うことはできません。

脳の腫れやむくみには抗浮腫療法を行う

脳梗塞が起こると、梗塞部やその周辺がむくんで腫れてきます。

腫れが大きくなると、脳や血管が圧迫されて、梗塞が起こっていない正常な脳神経細胞にも悪影響が及ぶので、これを防ぐ治療が必要です。

こうした脳のむくみや腫れを抑えたり、改善するために行われるのが、抗浮腫療法です。
この治療法では、グリセロールやマンニトーールという薬を点滴で用います。

むくみの原因となる、余分な水分を排泄させる働きがあり、むくみの改善に効果を発揮します。

ただし、心臓や腎臓に大きな負担をかけるため、高齢者や心臓疾患、腎臓疾患がある場合には行えないこともあります。

抗浮腫療法が適用となるのは、脳にむくみが出ている場合のみです。

心原性脳塞栓症やアテローム血栓性脳梗塞で、梗塞が大きく、さらに拡大するおそれがあるときに行われることがほとんどです。

脳保護薬を用いる治療法もある

これまで説明した抗血栓療法は、脳の血流を回復させて脳枕席の症状を改善したり、後遺症の軽減を図るという治療法です。

これに対して、最近登場した新しい治療法があります。

脳保護薬を用いる治療です。

脳梗塞の発症によって循環障害に陥ると、脳神経細胞が障害を受け、後遺症がより重くなるおそれがあります。

脳保護薬は、これを防ぐための薬です。

脳保護薬は、これまでにも世界中で開発が急がれていましたが、動物実験では効果があったのに臨床で用いたら効果が得られなくなったり、重人な副作用が出たりして、なかなか実際の治療に用いる薬がありませんでした。

しかし、エダラボンという薬が日本で開発され、承認を得ることができました。

エダラボンは2001年に承認を受け、世界初の脳保護薬として現在、治療に用いられています。

梗塞部の周辺にあるペナンブラを救う

脳梗塞が起こると、検塞部の周辺には活性酸素などのフリーラジカルという有害物質が発生します。

そして、梗塞部の周辺には、脳神経細胞が干死半生の状態に陥っているペナンブラの領域があります。

このペナンブラがフリーラジカルによって攻撃されると、神経細胞が死んで壊死に陥ってしまうことになります。

また、近くにある血管の内皮細胞もフリーラジカルによって障害を受けます。

そこで、エダラボンを投与することによってフリーラジカルを捕捉して取り除き、瀕死の神経細胞を保護し、ペナンブラが脳梗塞にならないようにします。

これによって、脳卒中症状を改善したり、後遺症を最小限に抑えることができます。

エダラボンは発症後24時間以内に使用する

脳保護薬のエダラボンは、発症後24時間以内に投与することが決められています。

使用するにはタイムリミットがありますが、24時間以内であれば、どのタイプの脳梗塞にも用いることができます。

エダラボンの治療効果は、左下のグラフでもわかるように、未投与の場合と比べて、投与した場合は後遺症が軽くてすむ例が増えています。

もちろん、エダラボンを使って治療すれば、ほかの治療がいらないというわけではありません。

急性期に行える治療法の選択肢が増えたと考えてください。

脳梗塞の程度や症状によっては、抗血栓療法と脳保護薬を組み合わせることによって、より高い治療効果が得られると期待できます。

なお、どんな薬でも副作用はあります。

脳保護薬のエダラボンにも副作用が起こりえます。

腎臓の悪い人に用いると、急性腎不全を起こす危険があります。

そのため、重い腎臓病がある人には使用できません。腎機能が低下している人や高齢者には、慎重に投与しなければなりません。

治療は時間との勝負。早いほど後遺症も軽い

脳枕席の急性期治療はいずれも時間との勝負。

発症直後、できるだけ早く始めることが肝心です。

発症から時間が経ちすぎると、治療効果が期待できなくなります。

発症してから治療効果が期待できる許容時間のことを「治療時間の窓」といいます。

この窓の広さは、治療法によって異なります。

t-PA静脈療法は窓が小さく、発症してから、わずか3時間以内でしか治療効果が期待できないのです。

世界中で展開されているブレインーアタックキャンペーンでは、「タイムーイズーブレイン」という標語が使われています。

直訳すると「時は脳なり」ということになりますが、脳梗塞の急性期治療にはこのように「治療時間の窓」があるため、時間との戦いであるという意味が、この標語には込められているのです。

急性期の治療は、生命を助けることはもちろんですが、予後に介助なしで生活できるレベルまで回復させることが目標です。

その回復の目安としてよく用いられているのが「モディファイドーランキンースケール」です。

発症から3か月目ごろの患者さんの日常生活の状態で評価しますが、なるべく低いグレードになることを目指して治療します。

後遺症によるQOL(生活の質)や、ADL(日常生活動作)の低下を少しでも防ぐためには、以上のような治療法の予備知識を持つことと、入院(病院への搬送も含めて)までのスピードにかかっているのです。

発症直後は感染症や合併症の治療も必要

脳梗塞の急性期には、さまざまな合併症が起こりやすいといえます。

合併症によっては、命を脅かす危険もあります。

その後の治療経過にも大きく影響します。

脳梗塞ではたとえ軽症であっても入院治療がすすめられるのは、合併症による不測の事態に対応する必要もあるからです。

意識障害を伴う中等度以上の脳梗塞では、ほぼ必ずといっていいほど発生する合併症があります。

感染症と胃やトニ指腸などからの消化管出血です。

感染症対策としては、意識障害がある患者さんには入院直後から抗生物質を点滴で静脈投与します。

高齢者は肺炎によって死亡する危険が高いため、万全の体制をとります。

消化管出血については、プロトンポンプ阻害薬やH2ブロッカーなどの抗潰瘍薬があるため、ロに期から投与することで、ほぼ制圧することができるようになりました。

急性期の治療では家族の情報が必要

脳梗塞と思われる症状で病院に運び込まれたとき、医師は診断に必要な情報を得るため、本人、または付き添いの人にいろいろな質問をします。

ただ、患者さん本人が受け答えができないことが多いので、たいていは家族が頼りです。
発症した時間や症状、発見時の状態は、治療方針を決定するうえで大事な情報となります。

また、どの治療法を選択できるかにも影響します。

そのほかに、患者さんがいま現在、どんな病気にかかっているか、服用している薬があるのか、あれば薬の名前(商品名など)も知らせます。

過去に手術などを受けたことがある場合も医師に申告してください。

特に、心臓疾患や不整脈などの病気で治療や手術を受けたことがある場合は、重要な情報となります。

アレルギーの有無も重要です。

使用薬によってはアレルギー反応を起こし、ショック症状などで命にかかわります。

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